はじめに:医療事故の背景には“気づき”がある

細かい些細なヒヤリハット報告が多いけど、これってどう現状を捉えたらいいの?
安全委員として組織の運営をしていると疑問に感じる瞬間があるかと思います。今回はそんな時に役立つ法則を1つ紹介します
医療・福祉の現場では、ほんの些細なミスが積み重なり、重大な医療事故へと発展することがあります。
この考え方は「ハインリッヒの法則」に基づくものであり、医療安全管理において非常に重要な理論。今、勤めている職場が事故をどのように捉え、分析し、対策していくかの判断基準にもなりうる法則の一つです。
本記事では、医療安全管理者としての実績もある作業療法士が
- ハインリッヒの法則の基本
- インシデントやヒヤリ・ハットとの関係
- 報告文化の大切さ
3つの視点でわかりやすく解説します。
ハインリッヒの法則とは?【事故予防の基本原理】

労働災害から生まれたリスク管理の黄金比
「ハインリッヒの法則」とは、アメリカの労働安全技師ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが1930年代に提唱した理論です。
労働現場での事故の傾向を分析した結果、次のような法則が導かれました。
🔹 ハインリッヒの法則の比率
- 1件の重大事故
- 29件の軽微な事故
- 300件のヒヤリ・ハット(未遂・異常はあるが被害なし)
この「1:29:300の法則」は、小さな失敗の積み重ねが、やがて大きな事故を生むことを警告しています。
1つの重大事故の裏には29の軽微な事故があり、その下には300のヒヤリハットが潜んでいるという考え。だからこそ、ヒヤリハットが多い状況は重大事故につながる原因が隠れているかもしれないというセンサーを働かせなくてはいけません。
※ただし、ヒヤリハットや事故報告ができている組織は安全文化の醸成ができている状況ですので「事故報告を減らすこと」はマイナスに働くことはご注意ください。
医療現場でのハインリッヒの法則:見えないリスクにどう備えるか
医療・福祉の現場でも、ハインリッヒの法則はそのまま当てはまります。たとえば、以下のような構造がしばしば確認されます。
事故レベル | 医療現場での具体例 |
重大事故(1件) | 誤薬、手術ミス、取り違え、重篤な患者被害など |
軽微な事故(29件) | 錠剤の数え間違い、ラベルの貼り間違い、小規模な投薬ミス |
ヒヤリ・ハット(300件) | 確認ミス、名前の聞き間違い、記録ミスの未遂など |
✔️ 例:重大手術ミスの裏にある見逃された“兆し”
ある重大な手術ミスが起きた事例では、器具の準備不足や術前確認の省略などが何度も繰り返されていたことが後に判明しました。
それらの兆候を見過ごしていたことで、結果的に取り返しのつかない事故に至ったのです。
なぜヒヤリ・ハット報告が重要なのか?

ヒヤリ・ハットや軽微なインシデントの報告を徹底することで、潜在的なリスクを“見える化”できます。
ヒヤリ・ハット報告の3つの重要な意義
- リスクの共有と可視化
→ 個人の体験をチーム全体の学びに変える - 対策の立案と仕組み改善
→ 手順書やフローの見直し、再研修やチェックリスト導入など - 安全文化の醸成
→ ミスを責めずに共有できる「心理的安全性」が職場に生まれる
🔑 ハインリッヒの教え:
「小さな異常を拾い続けることが、大事故を防ぐ最大の予防策である」
医療安全における“報告文化”の確立が事故を防ぐ

忙しくても、報告は“命を守る行動”
現場では「時間がない」「面倒くさい」といった理由から、ヒヤリ・ハットやインシデントの報告が後回しにされがちです。
しかし、報告そのものがリスクマネジメントの一部であり、事故を未然に防ぐ第一歩です。
“責めない文化”が医療安全を強くする
報告しやすい職場づくりには、失敗を責めずに受け入れる土壌が不可欠です。
- ミスを個人の責任とせず、「仕組みの問題」と捉える
- 報告=改善のチャンスとしてポジティブに評価する
- 上司やリーダーが率先して報告する姿勢を示す
小さな気づきを積み重ねて、大きな事故を防ぐ
ハインリッヒの法則が示すように、医療事故の多くは突然起こるわけではなく、日々の小さな見逃しの積み重ねが原因です。
だからこそ、**「気づく」「記録する」「共有する」**という行動が、未来の命を救うことに繋がります。
✅ 医療現場で今すぐ実践したい3つの行動
- 小さな異常でも「見逃さず、報告する」ことを習慣に
- インシデント・ヒヤリハット報告をチーム全体で分析
- 「報告しやすい職場環境づくり」を組織全体で推進する
医療安全を守るのは、あなたの“気づき”から
「この程度なら大丈夫だろう」と思ったその瞬間が、後々大きな差を生むことがあります。
1件のヒヤリ・ハットを真摯に受け止め、誰かの命を守るための一歩として記録に残しましょう。
あなたの気づきと行動が、医療現場の安全文化を築く礎になります。
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