作業療法実習において、レジュメの完成度は評価や指導の受け方に直結します。その中でもFIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価表)は、作業療法士として必須の評価法の一つです。
しかし、学生や新人セラピストの中には「FIMをどうレジュメにまとめればいいかわからない」「ただ数値を並べるだけになってしまう」という悩みを持つ方が少なくありません。
この記事では、FIM評価を正しく、かつ読みやすくレジュメにまとめる方法を、指導者目線で解説します。
さらに、評価の根拠や考察まで書けるようになるコツも紹介します。
FIM評価とは何か?基礎を押さえる

まずは、レジュメ作成以前にFIM評価の基本を押さえましょう。
FIMの特徴
- 全18項目(運動13項目、認知5項目)から構成
- 各項目を7段階で評価(7=完全自立、1=全介助)
- 合計点でADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)の自立度を把握できる
運動項目例
- 食事
- 整容
- 更衣(上半身・下半身)
- 排泄コントロール
- 移乗(ベッド・椅子、トイレ、浴室)
- 移動(歩行/車椅子、階段)
認知項目例
- 理解
- 表出
- 社会的交流
- 問題解決
- 記憶
FIM評価は、単なる点数付けではなく、患者さんの生活機能全体を定量的に捉えるツールです。
このため、レジュメに記載する際も「ただのスコア表」ではなく臨床的な意味を持たせる書き方が求められます。
レジュメにFIM評価を載せる目的
- 患者像を短時間で共有できる
- 点数を見ればADLの全体像が分かる
- チームカンファレンスで迅速な情報共有が可能
- 介入方針の根拠を示せる
- どのADL項目が優先的な課題か明確化
- 介入計画とリンクさせやすい
- 評価スキルのアピール
実習先の指導者に、自分が客観的評価を行えることを示せます。
そもそも回復期病院や病棟ではFIMの点数に基づき、FIM効率を算出して運営をしなければならない医療保険上のルールもあるのでFIMの情報は重要であることが理解できると思います。
FIM評価をレジュメに載せるときの基本構成

- 評価日と評価者名(例:「2025年8月10日」)
- FIMスコア表(運動・認知を分け、項目/スコア/観察コメント)
- 合計点と内訳(例:「運動:65点/認知:30点/総合:95点」)
- 評価の根拠(観察所見)
- 考察部分でFIM課題と介入方針のリンク
表形式でのFIM記載例
項目 | スコア | コメント |
---|---|---|
食事 | 6 | 自助具使用にて自立 |
整容 | 5 | 立位保持困難で座位実施 |
上半身更衣 | 5 | 動作に時間要す |
下半身更衣 | 3 | 立位バランス不安定 |
排泄管理 | 6 | 時間かかるが自立 |
ベッド移乗 | 4 | 監視下で実施 |
歩行 | 4 | T字杖使用、屋内50m可能 |
理解 | 7 | 完全自立 |
記憶 | 6 | 時折確認必要 |
レジュメ作成時の注意点
- 単なる数字の羅列にしない
- 観察コメントは短く具体的に(5〜10字程度)
- 評価時の条件(補助具、介助者、環境)を明記
- 患者本人の意向や目標とも関連づける
- 誤解を招く表現は避ける
■ 評価結果は「すべて載せる」より「必要な情報を絞る」勇気が大切

実習でFIM評価を行うと「せっかく一生懸命評価したから、すべて載せたい」という気持ちになります。もちろん、その努力と正確な評価はとても大事ですし、臨床能力を高めるうえで欠かせない経験。
しかし「レジュメに載せる」という条件がついた場合、ただ結果を並べるだけでは
- 情報過多
- 読者(指導者や他リハスタッフ)が重要な点を見つけにくい
- レジュメの余白が少なくなって、考察が薄くなる
といったデメリットが生まれます。
クライアントにとって本当に必要な情報だけを抽出する――これは臨床現場でも非常に求められるスキルです。
だからこそ、思い切って削る勇気を持つことが重要です。
すべての項目を記載するのではなく、
- FIMの合計点数
- 特記すべき変化
- 臨床上重要な項目だけ
を載せるだけで相手に必要な情報は「伝わり」ます。
例
「トイレ関連動作」に対するクライアントへの介入報告レジュメなら、以下のように構成します。
- トイレ移乗
- トイレ動作
- 排泄コントロール
このようにレジュメタイトルに直結する部分だけを選び、その理由や観察ポイントを簡潔に添えることで、レジュメの質は格段に向上します。
ポイント:評価の詳細データは自分の記録に残し、レジュメは要約版として構成する。
臨床現場では「全てを記録する能力」と「必要な情報を瞬時に引き出す能力」の両立が求められるため、この取捨選択は練習の場として最適です。
指導者が見るポイント
- 評価の正確性(実際のADLとスコアが一致しているか)
- 観察力(数字の裏にある動作特性を言語化できているか)
- 臨床推論とのつながり(評価から課題分析・介入計画まで流れがあるか)
まとめ

FIM評価は、作業療法実習のレジュメで患者像を的確に伝えるための重要ツールです。
①正確な数字での評価
②そこに至った根拠
③レジュメ課題・方針にあった抽出された記載
という三点セットを意識することで、指導者やチームにとってわかりやすく、有用なレジュメになります。
学生や新人セラピストは、すべての項目載せるのではなく、合計点数と特記すべき義務の項目を載せていくだけでも充分となることを意識して、臨床現場で一歩リードできる存在になりましょう。
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