障害福祉やリハビリの支援現場では、日々の記録や会話を通して利用者との信頼関係を築いていきます。
しかし、無意識のうちに「〜させる」「〜を実施すべき」といった表現を使っていませんか?
こうした言葉は、支援者と利用者の間に上下関係を生みやすく、障害福祉における「利用者主体」の支援から離れてしまう危険性があります。
本来、障害者と支援者は「弱者と強者」という関係ではなく、あくまで「人と人」として向き合う存在です。
言葉遣いは、支援者の姿勢や支援理念を映し出す鏡。
もし支援者が無意識の傲慢さや利己的な考えを持てば、それは日々の記録や普段の会話にも表れ、利用者との信頼関係やリハビリ効果にも悪影響を及ぼします。
この記事では、支援現場でありがちな危険な表現の例と、その改善方法を解説し、上下関係ではなく共に歩む支援のための実践ポイントを紹介します。
1. 無意識に使われる「〜させる」「〜を実施すべき」という表現

支援記録や支援計画、リハビリの場面で「〜させる」「〜を実施すべき」という表現は珍しくありません。
例:
- 「利用者に掃除をさせることで生活習慣を改善する」
- 「〜のプログラムを実施すべき」
こうした文章は、支援者が主導し、利用者が従うという構図を強調します。
もちろん、必要な行動を促すことはありますが、表現次第で「命令的」に受け取られる可能性があります。
2. 上下関係を助長する言葉の危険性
障害福祉の現場で大切なのは、相互理解と協力を前提とした利用者主体の支援です。
しかし、何気ない言葉遣いによって「支援者=強者」「利用者=弱者」という構造が作られてしまいます。
これは利用者だけでなく、支援者自身の姿勢やチームの雰囲気にも悪影響を与えます。
3. 傲慢さのサインは記録と会話に出る
以下のような記録や発言は、支援現場における傲慢さや謙虚さの欠如のサインです。
- 利己的な支援目標:「自分のやり方に従わせる」形になっている
- 成果優先の表現:「〜ができたかどうか」だけに焦点を当てる
- 相手視点の欠如:「利用者がどう感じたか」の記述が少ない

4. リハビリ場面における上下関係を生まない表現例(10例)
No. | NG表現(避けたい例) | 推奨表現(利用者主体・尊重ある言い方) |
1 | 利用者に歩行訓練をさせる | 利用者が安全に歩行練習に取り組めるよう環境を整える |
2 | 上肢運動を毎日実施させる | 上肢運動を生活の一部として継続できるよう支援する |
3 | 階段昇降を行わせる | 本人のペースで階段昇降に挑戦できるよう見守る |
4 | ストレッチをやらせる | 気持ちよく体を伸ばせるストレッチ方法を一緒に確認する |
5 | 作業課題を終わらせる | 作業課題を達成感を持って終えられるよう声かけする |
6 | 車椅子からベッドへの移乗を練習させる | 安心して移乗練習できるよう生活場面で移乗機会を増やす調整をする |
7 | 筋トレを決められた回数やらせる | 体調に合わせて前向きに取り組めるよう調整する |
8 | 立位保持を長時間やらせる | 無理なく継続できる条件や作業を一緒に作る |
9 | 食事動作を練習させる | 自分らしく美味しい食事になるよう道具や姿勢を工夫する |
10 | 発声練習を繰り返させる | 楽しく声を出せる発声練習(歌や人生のエピソードなど)を取り入れる |
5. 無意識の言葉遣いを修正する方法

- 主語を利用者に置き換える
「支援者が〜させる」ではなく「利用者が〜できるように支援する」
- 行動の背景を記録する
「掃除をした」ではなく「自分から掃除を始める姿が見られた」
- 感情や反応を加える
「笑顔で取り組んでいた」「不安そうな表情だった」など
6. チーム全体で気づく仕組みを作る
- お互いに指摘できる文化:言葉遣いや姿勢の偏りを話し合える場を持つ
- 外部視点の導入:見学者やボランティアの受け入れで第三者の目を取り入れる
- 研修や振り返りの習慣化:記録の書き方や支援姿勢を定期的に見直す
7. 「人と人」の関係に立ち返る

障害者と支援者という立場を超えて、最終的には「人と人」として関わることが重要です。利用者主体の支援は、敬意と尊重の積み重ねから生まれます。
まとめ|言葉を変えると支援が変わる
「〜させる」「〜を実施すべき」という表現は小さなことに見えて、支援現場の空気や利用者との関係性を大きく左右します。
記録や会話を見直し、上下関係ではなく共に歩む支援を意識することが、障害福祉やリハビリの質を高めます。
支援とは「してあげること」ではなく、「共に歩むこと」。
もっと踏み込むと「あなたという支援者がいなくても」クライアントが自分らしい生活を送れるように支援することも意識したいものです。
今日から、あなたの言葉を変えてみませんか?
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