🔷 SOAP記録とは?医療・リハビリ現場での基本スキル

SOAP記録は、医療・看護・リハビリテーション・介護など、多職種が関わる現場で共通言語として用いられる記録方法です。
- 主観的情報(Subjective)
- 客観的情報(Objective)
- 評価(Assessment)
- 計画(Plan)」
の頭文字を取ったもので、一貫性のある記録とチーム間の情報共有を可能にする構造化された記録方式です。
記録とは、ただ出来事を書き留める作業ではありません。
「誰が」「何を見て」「どのように判断し」「どんな対応をとるのか」を体系立てて残すことで、医療の質を高め、事故やトラブルのリスクも低減します。
🔶 SOAP記録とは? ― 各要素の意味と役割を整理

SOAPとは、以下の4つの視点に基づいて記録する方法です。
SOAP記録は、「観察 → 判断 → 行動」という医療のプロセスを、記録という形で可視化するツールです。記録力は、そのまま専門職としての力量を映す鏡でもあります。
項目 | 英語表記 | 内容の意味 | 書くべき内容 |
S(主観的情報) | Subjective | 患者や家族が語ったこと、感じていること | 患者・家族の発言、感情、訴え |
O(客観的情報) | Objective | 検査結果、観察結果、動作・バイタルなど事実に基づく情報 | バイタル・観察・行動などの事実 |
A(評価) | Assessment | 上記SとOを踏まえた専門的評価・分析 | 状態の分析、経過予測、根拠ある判断 |
P(計画) | Plan | 今後のケア、対応、治療・介入計画 | 次の目標や対応、介入内容の明確化 |
この構成により、記録者の主観に偏らない、根拠に基づいた判断が可能になります。
また、医療者としての視点を論理的に「見える化」できる点も大きなメリットです。
🔷 各項目を詳しく解説|SOAPの本質を理解する

【S:Subjective|主観的情報】
Sは患者や家族の「声」に耳を傾けるパートです。
本人の訴えや感情、表情から読み取れるニュアンスなど、“主観的”な情報を記録します。
✅ 記載する内容の例:
- 「膝がズキズキして歩きにくい」と話した
- 「今日はあまり眠れなかった」と本人が訴える
- 家族が「昨日より動きがスムーズになった気がする」と発言
✅ 書き方のポイント:
- 発言はできるだけ“そのままの言葉”を記録
- 感情表現や様子も、観察に基づいて丁寧に記載
- 曖昧な表現(例:「しんどそう」など)は具体性をもって補足
患者の言葉は、ニーズや不安のサインでもあります。
そこに目を向け、的確に拾い上げる力が医療者には求められます。
【O:Objective|客観的情報】
Oでは、第三者が見ても同じように理解できる“客観的な事実”を記録します。
バイタルサイン、検査結果、観察による事実、身体機能の変化などが該当します。
✅ 記載する内容の例:
- 血圧 130/85、体温 37.1℃
- 歩行時にふらつきあり、転倒リスク高
- ROM(関節可動域):右肩屈曲 90°→110°に改善
- 昼食摂取量:8割、咀嚼・嚥下に問題なし
✅ 書き方のポイント:
- 数値・行動・観察結果は具体的に記載
- 抽象的な表現(例:「元気そう」)は避け、具体的な行動で示す
- 患者の動作、表情、協力度なども“見たまま”を記録
客観的記録は、エビデンスの蓄積にもつながり、他職種への報告資料にも活用できます。
【A:Assessment|評価】
Aは、S(主観)とO(客観)から得られた情報をもとに、医療・専門職としての視点で状態を分析・評価するパートです。
ここでは、単なる観察の羅列ではなく、**「なぜそう判断するのか」「どのような可能性があるのか」**を記述します。
✅ 記載する内容の例:
- 疼痛の軽減により可動域が広がり、動作の自発性も向上している
- 睡眠不足による疲労蓄積が動作の鈍さに影響している可能性あり
- 食事摂取量の減少と便秘症状の関係が考えられる
✅ 書き方のポイント:
- SとOの事実から“導き出される判断”を明記
- 複数の可能性がある場合は「~の可能性が高い」「~が懸念される」と記述
- 評価は、次のP(計画)とリンクする視点で書く
専門職としての“考える力”が最も問われるのがこの項目です。
根拠ある評価を記録することで、自身の判断の質を高めることができます。
【P:Plan|計画】
Pでは、今後の具体的な対応・ケア方針・目標を明確に示します。
Aの評価に基づき、どのような介入を行うのかを記録する重要なステップです。
✅ 記載する内容の例:
- 引き続き同様の運動メニューを実施し、週2回のROMチェックを行う
- 疼痛コントロールを優先し、次回より温熱療法の導入を検討
- 睡眠状態の観察継続、必要であれば主治医に相談予定
✅ 書き方のポイント:
- 具体的かつ実行可能な内容にする
- 他職種との連携内容も含めると効果的
- 「様子を見る」だけで終わらず、観察ポイントや評価基準も記載
Pは、現場での行動の指針であり、再評価の際の基準にもなります。
曖昧な記録は、対応の遅れやチームの混乱を招く恐れがあります。
🔶 書き方の実例とポイント【リハビリ場面での記録例】

🧑⚕️ 例:上肢のリハビリ中のケース
項目 | 記録内容 | 解説ポイント |
S | 「今日は痛みがまし。少し楽になった気がする」と本人談 | 発言はそのまま書く(主観の尊重) |
O | 上肢挙上時、表情に苦痛なし。ROM:肩屈曲90°→105°に改善。 | 客観的なデータと観察事実を記録 |
A | 疼痛軽減とともに動作の自主性向上。機能回復の傾向あり。 | S・Oを統合して専門的に評価 |
P | 同様の運動プログラム継続+自主トレ追加指導予定。 | 計画は明確・具体的に記述する |
✅ ポイント:
- 事実と評価を分けて記載することで、他者が読んでも判断の根拠が明確に
- 記録は「将来の自分やチームメンバーへの伝言」
🔶 よくあるミスと改善ポイント

SOAP記録はシンプルな分、慣れてくると形式的になってしまいがちです。特に新人や実習生の記録には、以下のような誤りがよく見られます。
❌ よくあるNG例
- Sに評価を書いてしまう(例:「~が良くなっている」→これはA)
- Oにあいまいな言葉を使う(例:「しっかりしていた」→具体的でない)
- Aが空欄、または前回のコピペ
- Pが「次回も様子を見る」だけで曖昧
✅ 改善のヒント
- 「誰が言ったか・誰がどう見たか」を意識する
- 曖昧な表現は避け、事実に基づく言葉を使う
- 評価(A)はS・Oから論理的に導く
- Planは次回のアクションがイメージできるよう明記する
🔷 SOAP記録のメリットと注意点|多職種連携を支える記録法

✅ SOAP記録がもたらす5つのメリット:
- 思考を整理できる:観察 → 判断 → 対応の流れが明確になる
- 記録の質が安定する:書くべき項目が決まっているため抜け漏れが減る
- 専門性が可視化される:AとPにより、専門職としての介入意図が伝わる
- 引継ぎ・連携がスムーズ:多職種との情報共有が簡単になる
- 訴訟リスク軽減:正確な記録が、リスク管理や証拠として機能する
🔷 最後に|SOAP記録は“ケアの質”を可視化する
SOAP記録は、単なるフォーマットではなく、「考える力」「伝える力」「チームで支える力」を養うためのツールです。
日々の観察から得た情報を的確に記録することで、自分の臨床判断を磨き、質の高いケアを提供できます。
📌 記録とは“未来のあなた”や“チーム”へのメッセージ
- 自分がいないときにも状況が正しく伝わる
- チーム全体の共通認識を形成できる
- 繰り返すことで思考力・観察力が自然に身につく
SOAP記録を正しく書けるようになることは、すべての医療従事者にとっての基礎力。
書くことで考え、考えることで行動が変わる──
SOAP記録は、医療の「見える力」を育てる第一歩です。
これはCTAサンプルです。
内容を編集するか削除してください。