医療やリハビリ、特に作業療法や看護実習において欠かせないのがSOAP記録。
その中でも「S(主観的情報)」は、患者さん本人の声を反映する大切な部分です。
主観的情報は患者の体験や感覚を反映するため、客観的データとは異なる意味を持ちます
- 膝がズキズキする
- 夜になると眠れない
- リハビリをすると疲れやすい
といった表現は 数値や検査では測定できない情報。
しかし、実習の段階では「S」の捉え方や書き方に戸惑うことが少なくありません。
というより、OT10年以上になる私も指導をしていて「SOAPのSって…」とうまく言語化できない時がありました。
最近、臨床実習→評価実習と続けて指導する機会があって、これじゃいかんと感じたので、再度勉強しつつ、整理していきたいと思いSOAPのSについて記事にします。
この記事では、SOAP記録の基礎から、Sを記録する際の具体例、注意点、失敗例まで徹底解説します。
次のここが一番伝えたい!は「私見」ですので、あくまでも参考程度に一読ください。
ここが一番伝えたい!しゃべれない患者さんのSはどうするの?
少し脱線しますがSOAPのS(主観的情報)について私見を述べさせてください。
SOAPのSは大抵「喋った内容を書く」ので
『SpeechのS』と思い込む
実際に病院のカルテや実習指導でも喋ってた内容を書けばいいと勘違いが横行してしまうのが現実です。
S(Subjective):主観的情報です!
で、生まれる疑問No.1が喋れない人のS書けない問題
その解決策を「…」で済ませてるなら個人的にはアウトです!!
以下は個人的な意見や考え、ある意味一人のセラピストの主張程度に読み進めてください
<発語はできず、発声は可能>
S:(病前に好んで食べていた羊羹を嬉しそうな表情で)
「あーあー」と大きな声を出す
発声が生じるまでの過程や状況(私はよく前提条件といっています)を簡潔に記載するようにします。
そうすることで、日々の記載をしていく中で発声にも状況による変化があることが記録として残りますし、それが評価にもつながるからです。
<発声もしないが表情や仕草で表出がある>
S:笑顔(院内音楽会に参加し、好きな曲が流れた際)
こちらもどういった作業、介入、環境によって何が表出されたのかを記載します。
<表情も発声も何もない>
S:…
こんな記録してないですよね?
正直にいいます。新人の時、私はやってしまってました。
でも、反省の意味も込めて、そして他の方が繰り返さないように。
SOAPで記載を求められる全ての人に伝えたい。
※本来のSOAPの記載方法からすると間違っているかもしれませんが、お付き合いください
ここについては完全に「私見」です
でも過去の反省を込めて書きますのでお付き合いください
反応や表出する瞬間を生み出す介入方法を検討しよう!
いつも可動域訓練(俗にいうベッドサイドのROMex)だけをしていれば、変化も何も観察できなくなるでしょう。
でも、立ち止まって一緒に考えてみてください。
何も表出されないから何もしなくていい、では絶対にないはず!
私はよく
- 冷たいタオル、暖かいタオルで顔を拭いて綺麗にした時
- ホットパックなどで温めた前後(医師に許可はもらってくださいね)
- アロマなどの香りをかいだ時
上記のような五感に訴えるような介入をしてみて、その前後の反応を観察していました。
あったかいタオルで顔を拭いてもらえたらホッとするな
表出がなくSが書けない時の記載方法
五感に訴えるアプローチ(タオルで洗顔)をした場合の例でSOAPを記載するとしたら
S:(暖かいタオルで顔を拭きながら天気の話をする)表情変わらず
O:ROMex(頚部〜肩jt、肘jt)や手浴も同様に表情変化なし
A:温度刺激に対する反応は得られにくい可能性あり
P:①入浴時の変化有無について病棟スタッフへ聴取
②アロマなど香りに対する反応も評価する
やってみたけど、変わりませんでした。それも立派な介入だな
でも、そこに意図や意思を持って介入した結果かどうか
が何よりも大事で大切にしたい。
また、タオルで洗顔の反応も1回だけでなく3日〜1週間ほど続けてどうなのか比較検討も必要でしょう。
- 体が硬くならなければいいでしょ
- 関節の可動域保てばとりあえずOK
- 記録の時間も少ないし、Sは「…」でいいや
そんなふうに考えず、目の前にいる患者さんを一人の人(クライアント)として向き合い、介入し、より良い時間をともに過ごせるように工夫し続けたいものです。
その軌跡をSOAPで記載する。
その第一歩が「S」なんです。
大事に記載してください。
過去の反省を込めて…
SOAP記録とは?まずはおさらい: 4つの基本要素
ここからは一般的なSOAP記録について記事にしていきます。
臨床現場で患者さんの状態を整理・共有するための記録方法がSOAP。
以下の4つの要素から構成されます。
- S(Subjective):主観的情報
患者さんが感じている症状や思い、訴えなど。 - O(Objective):客観的情報
バイタルサインや検査結果、観察所見など、測定可能で客観的に確認できる情報。 - A(Assessment):評価
SとOを踏まえて、臨床家が状況をどう解釈するか。 - P(Plan):計画
今後の治療方針、介入内容、指導計画など。
この中でもSは患者中心の医療・リハビリを実現するための出発点となる要素です。
S 主観的情報の定義と役割
S(主観的情報)とは、患者さん本人の声や体験をもとにした情報のこと。
たとえば
- 肩が痛くて右側を下にして寝れず、毎日が嫌になる
- トイレに行きたくても行けなくて毎日つらい
- 仕事に復帰したらパソコン使えないと困る
など、患者さん本人が感じ取っていることを指します。
役割は大きく分けて次の2つです。
- 患者さんの視点を記録する
→ 治療者の解釈ではなく、患者さんが「どう感じているか」を正しく残す。
例:身体面(痛い、痺れる、疲れやすい)や精神面(つらい、楽しい、きつい)
- ケアの方向性を決める材料となる
→ 本人の希望や不安を理解することで、より適切な介入計画が立てられる。
例:トイレに自分で行くことが必要=トイレ関連動作、立位や移乗動作の安全性
痛みが日常生活に影響=疼痛原因の除去(随意性、筋や関節の柔軟性)
つまり、SOAPのS(主観的情報)が次に記載する「OAP」に大きく影響を与えるのです。
主観的情報に含まれる内容の具体例
Sに含まれる情報は、実際の臨床では幅広く収集されます。
代表的な例を以下に挙げます。
- 症状に関する訴え
腰がズキズキ痛む、めまいがする、掴めるけど離せない - 日常生活に関する感覚
階段の上り下りがつらい、トイレでズボンの上げ下げに時間かかる - 心理面や感情の表現
家に帰れるか不安で眠れない、元通りになれないから気持ちが沈む - 本人の希望・目標
歩けなくてもいいから旅行に行けるようになりたい、仕事に早く復帰したい
このようにSは数字やデータ(検査や評価の値)では表せない「人間らしい声」を反映する部分。
目の前の患者さんが何を感じ、何を考え、何を表出しているのか。
そこを訓練介入しながら捉え、記録に落とし込むことで日々の治療の根拠を残すのです。
Sを記録する際のポイントと注意点
Sを正しく記録するためには、以下の点に注意が必要です。
- 患者本人の言葉をそのまま書く
→ 「〜と訴える」「〜と話される」と記載する。 - 曖昧な表現を避ける
×「元気そう」
○「今日は体調が良いと本人が話していた」 - 情報を整理して簡潔に
ダラダラと会話形式で書かず、要点をまとめる。
まとめ:実習や臨床でSを正しく活かすために

最も伝えたいこと。
それは「SOAPのSを…で終わらせないで!」
何も感じず、何も表出しない人なんで絶対にいないからです。
もし、そう感じるならセラピストとして、いや、その人と関わる機会を得た一人の人間として、変化を生むための行動をしてほしい。
虚無な感覚に襲われるかもしれない。
面倒に感じるかもしれない。
でも、きっとその思いはSOAPに現れるし、それがクライアントのためになるはずだから。
そして、一般的なSOAP記録におけるS(主観的情報)は、患者さんの声を臨床に反映させるための重要な出発点です。
- 本人の言葉を正しく記録する
- 評価や計画と混同しない
- 具体的で簡潔にまとめる
これらを意識することで、ただの記録ではなく、臨床で活きる実践的な情報へと変わります。
特に実習生にとって、Sを丁寧に扱うことは「患者理解」と「信頼関係の構築」につながり、学びの質を大きく高めてくれるでしょう。




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