作業療法

陰性転移と陽性転移とは?介護・医療現場で信頼関係を深めるための理解と対応方法

医療・介護の支援現場で役立つ「転移」の理解と活用法〜信頼関係を強化する秘訣〜

介護や医療の現場では、利用者や患者との関係性が支援の質を大きく左右します。

その中で重要な心理的現象として知られているのが「転移」

転移とは、相手との関係の中で、過去に経験した感情や態度が無意識に再現されることを指します。

特に

・好意的な感情が働く「陽性転移」

・敵意や不信感などが表れる「陰性転移」

これらは支援者とクライアント双方に大きな影響を与えます。


陽性転移は信頼関係の強化や治療の効果向上につながる一方、陰性転移はコミュニケーションの停滞や関係悪化を招く可能性があります。

支援者にとって大切なのは、この2つの転移を正しく理解し、陽性転移を活用しながら陰性転移には適切に対応すること。

本記事では、介護・医療の現場でよく見られる転移の特徴、影響、そして支援者としての具体的な対応策を詳しく解説します。心理学的な視点と現場での実践的アプローチを組み合わせ、より良い信頼関係構築のためのヒントをお届けします。


1. 転移とは何か?

転移とは、過去に特定の人物との間で経験した感情や態度が、現在の別の人物との関係に無意識に現れる現象です。


例えば、幼少期に優しく接してくれた家族のように感じる支援者に対して、安心感や信頼感を抱く場合があります。

逆に、過去に嫌な経験を与えた人物と似た雰囲気を持つ相手に対して、理由もなく不信感や敵意を抱くこと。


2. 陽性転移とは

陽性転移は、支援者に対して好意的な感情が生まれる現象です。

  • 特徴
    1. 信頼、愛情、感謝などのポジティブな感情が含まれる
    2. 指示やアドバイスに素直に従いやすい
    3. 治療やケアが円滑に進みやすい
  • 現場でのメリット
    1. 信頼関係の構築
      好意的な感情が支援者とクライアントの距離を縮め、より安心感のある支援が可能になる。
    2. モチベーションの向上
      支援者側もやりがいを感じ、業務意欲が高まる。
    3. 治療効果の向上
      治療計画の遵守やリハビリの継続率が上がる。

3. 陰性転移とは

陰性転移は、支援者に対して敵意や不信感が生まれる現象です。

  • 特徴
    1. 不信感、怒り、拒絶感などのネガティブな感情が含まれる
    2. 過去の嫌な経験が現在の支援関係に影響を及ぼす
    3. コミュニケーションの停滞や拒否行動につながる
  • 現場での課題
    1. 感情の管理
      支援者自身が感情的にならず、冷静に対応することが求められる。
    2. 関係の修復
      陰性転移の原因を探り、信頼を再構築する努力が必要。
    3. 自己反省
      自分の態度や言葉が不信感を助長していないかを振り返る。

4. 転移への具体的対応方法

4-1. 陽性転移を活用する

  • クライアントの信頼を得やすい状況では、モチベーションを引き出しながら治療や訓練を進める。
  • 支援の枠を超えて過度に依存されないよう、適切な距離感を保つことも重要。

4-2. 陰性転移に対処する

  • 否定的な感情が見られた場合、まずは原因を探る。
  • 直接的な解決が難しい場合は、第三者(同僚、スーパーバイザー)を介して関係改善を試みる。
  • 定期的な振り返りや研修を通じて、言動の改善点を見つける。

5. 支援者としての心構え

  • 相手を「人」として見る
    「患者」「利用者」という枠を超え、一人の人間として接する。
  • 言葉の選び方を意識する
    命令的な表現を避け、「一緒にやってみましょう」という共同行動を促す言葉を選ぶ。
  • 感情の自覚とコントロール
    自分の感情の揺れを察知し、冷静な対応を心がける。

6. リハビリ現場での「陽性転移」と「陰性転移」の具体事例10選

陽性転移の事例(好意的感情がプラスに働くケース)

  1. 歩行訓練での信頼関係
    クライアントが支援者を「安心して頼れる存在」と感じ、恐怖心なく歩行訓練に挑戦できるようになる。
  2. 自主トレーニングの継続
    「先生に褒められたい」という気持ちがモチベーションとなり、自宅での自主トレを欠かさず行う。
  3. 新しい動作への挑戦
    支援者への信頼から、「無理かも」と思っていた階段昇降に挑戦する勇気が生まれる。
  4. 趣味活動の再開
    支援者の提案を前向きに受け入れ、長年やめていた園芸を再開し、生活意欲が向上する。
  5. 家族関係の改善
    支援者の介入をきっかけに、家族との会話が増え、リハビリの取り組み意欲がさらに高まる。

陰性転移の事例(否定的感情が関係に影響するケース)

  1. 拒否的態度の表出
    過去に厳しい訓練経験があり、似た雰囲気の支援者に対して「やりたくない」と拒否を示す。
  2. 指示への反発
    命令口調と受け取られる言葉遣いに反応し、訓練への協力を拒むようになる。
  3. 感情的な衝突
    支援者の表情や声色が、過去に嫌な思いをさせた人物を連想させ、怒りや不安を感じる。
  4. 信頼の喪失
    一度のミスや誤解で不信感を抱き、それ以降コミュニケーションが極端に減少する。
  5. 第三者への依存
    支援者への不信感から、他の職員や家族にばかり頼るようになり、リハビリが停滞する。

具体事例から学べること

  • 陽性転移は信頼関係を強化し、治療や訓練を円滑に進める力になる。
  • 陰性転移は一見マイナスに見えるが、原因を丁寧に探り、改善できればより深い信頼関係に繋がる可能性がある。
  • いずれの場合も、支援者の言葉遣い、表情、態度が転移の方向性に大きく影響する。

7. まとめ|転移の理解が信頼関係を強化する

介護・医療の現場では支援者もクライアントも一人の人間なので、陽性転移と陰性転移の両方が自然に起こります。


重要なのは、それを無意識のまま放置するのではなく、理解し、適切に活用・対処することです。

陽性転移は信頼を深める武器となり、陰性転移は関係改善のきっかけとなります。
支援者としての最大の役割は、「治療する人」としてだけでなく、「共に歩む人」として関わることです。

今日から、あなたの現場での言葉や態度を見直し、より良い支援関係を築く第一歩を踏み出しましょう。

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